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眠りについて知ろう

あなたのベストな睡眠時間はどれくらい?

 あなたは自分の睡眠に満足していますか?
 お子さまの睡眠をしっかりと把握していますか?
 皆さんは毎日眠っています。20歳でも7,000夜以上は経験している超ベテラン。どれくらいの睡眠時間が自分にとってベストなのか。本当はあなた自身が最もわかっているはずなのですが。

 NHKによる5年ごとの生活時間調査の1960年からのデータが手元にあります。10歳以上の日本人の現在の睡眠時間は、1960年とくらべると1時間近くも短いのです。日本人は、短い睡眠で十分なようにこの50年間で進化したのでしょうか?

 睡眠時間の国際比較の結果を、OECD(経済協力開発機構)が2009年に報告しています。日本は韓国に次いで二番目。長いのではなく短いのです。最も長いのはフランス。必要な睡眠時間に人種による差はありません。睡眠時間が足りないためか、日本人の健康感は、OECD加盟国中でスロバキアに次いで二番目に悪く、2012年の自殺率の高さは、韓国、ハンガリーに次いで第3位です。現在の日本人は、睡眠を犠牲にして、無理な生活をしているのが実情です。睡眠時間が十分なフランス人は、健康感もベストで生活をエンジョイしています。なお、OECDの2018年の調査では、中国、韓国を抜いて断トツの1位に日本は躍り出ています。もちろんワースト1です。

 オトナを見習ってか、子どもの睡眠も目をおおう現状です。厚生労働省が、2001年に出生した4万人以上の子どもを対象に、21世紀出世児縦断調査を行っています。4歳6ヶ月になった時点で午後9時以前に眠る子どもは、なんと20%以下。筆者らの年代では、子ども達の多くが午後8時~9時には寝ていたと記憶しています。厚生労働省の報告から20年近くたっていますので、現在は改善しているのではとも考えられます。2016年に日本の中学1年生から高校3年生の男女18,000人を対象とした睡眠時間の調査結果が報告されています(Ojio Y, SLEEP, 2016)。平均睡眠時間は中1男子で471分、中1女子で453分、中3男子で434分、中3女子で418分、高1男子で418分、高1女子で400分、高3男子で406分、高3女子で398分となっています。最も長い中1男子でも睡眠時間の平均は8時間以下です。年齢別に必要とされている睡眠時間については後述しますが、健康被害がなく脳をスッキリさせておくために必要な睡眠時間は14~17歳で8~10時間、最低でも7時間が限度とされています。中3女子や高校生の半数以上は、限界の7時間の睡眠すらとれていないのです。日本では、登校や出勤時刻で平日の朝の起床時刻はほぼ決まってしまいます。その結果、就寝時刻が遅くなるほど、睡眠時間が短くなってしまうのは当たりまえです。1960年代から現在まで、1時間近くも日本人の平均睡眠時間が短縮してしまった原因は、生活の夜型化が全世代に蔓延して、就寝時刻が遅くなったことによるのです。

 健康に被害のない睡眠時間は、高齢者を含め大多数の成人では、6時間半から8時間未満。最適時間は7時間前後。人間の睡眠は、短すぎても長すぎても問題なのです。睡眠には健康維持の他にもう一つ重要な働きがあります。頭をスッキリさせ十分に働くように休養させる役割です。学校で居眠りをしない、朝すっきりと目覚めてくる。そのために必要な睡眠時間は、3~5歳で10~13時間、6~13歳で9~11時間、14~17歳で8~10時間、18~64歳で7~9時間、65歳以上で7~8時間です。大多数の人では、質の良い睡眠を一日でこれだけ取っていれば、日中に強い眠気に襲われることはないとされています。

 しかし、誰でもがこれだけの睡眠時間を取れるものではありません。人間の睡眠には無理がきく面も少々あり、生活を阻害しない程度の睡眠時間をどうにかして見つけ、現代社会を乗り切るしかないでしょう。でも...朝の目覚めがとてもつらい。昼間に強い眠気をしばしば感じる。夕方や夜にうたた寝をついしてしまう。用事のない休日には、いつもより2~3時間以上長く眠ってしまう。睡眠時間が短くて、こんな状態の人は、睡眠がかなり不足した状態で生活している証拠です。不足分は蓄積し負債となってしまいます。どこかで睡眠負債を返済しないと、いつかは身体や脳の健康に危険信号が点灯します。睡眠負債の蓄積量は、目覚め続けている時間と同じだという研究結果があります。1日1時間程度の睡眠不足でも、30日間その状態が続けば、一睡もせずに30時間起き続けているのと脳の働きは同じなのです。このような人が午前7時に起床すると、午後3時の脳の状態は、徹夜した翌日の午後9時と同じようなレベルになっているのです。午後3時ころは生体リズムの影響で眠気が強くなる時間帯です。注意が散漫になり単純なミスを犯しやすくなっています。車を運転する人は、かなり危険なはずですね。こまめに睡眠負債は解消しておきましょう。

 自分にとって生物学的なベストな時間を決める方法も研究されています。時間的な手がかりのない(時計をなくし、外部環境の光や音、温度等の変動を遮断し他人とも接触しない)部屋が実験では使われます。アイソレーション・ユニットと呼ばれています。好きなときに眠り、好きなときに食べる。このような生活をしばらく続けていくと、睡眠時間は一定の時間に収斂していきます。その睡眠時間が、その人にとっての生物学的なベストの睡眠時間と考えられています。しかし、現実の生活を送っている人には、とうてい無理な注文です。

 まずは30分早くベッドにつくようにし、一週間ほど試してみましょう。それでも覚醒時の状態が改善しないようならば、もう30分早めに就寝し、さらに一週間続けます。このようにして、睡眠不足による症状がほとんど見られないようになれば、それがあなたの現実的なベストの睡眠時間です。寝つきにくい。夜中にしばしば目が覚める。浅い睡眠が多い。熟眠感がない。睡眠時間が8時間以上の人でこんな症状があれば、睡眠の質が悪くなっているかもしれません。ベッドにいる時間を7時間に制限し、一週間続けます。睡眠の状態が改善し、睡眠不足の症状がでないなら、7時間前後があなたのベストの睡眠時間です。自分のベストの睡眠時間を、一度探索してみてはどうでしょうか。

文章:睡眠評価研究機構代表 白川修一郎先生

日本睡眠学会 Japanise Society Of Sleep Research
JOBS 一般社団法人 日本睡眠改善協議会