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眠りについて知ろう

誰でもショートスリーパーになれるのか?(その1)

1.ショートスリーパー(short-sleeper)とは?

 米国睡眠医学会(American Academy of Sleep Medicine)の最新のThe International Classification of Sleep Disorders, Third Edition(ICSD-3, 睡眠障害国際分類第3版, 日本睡眠学会診断分類委員会訳)では、日常的に毎晩平均6時間未満の睡眠時間しかとらなくても、睡眠困難の訴えがなく、明らかな日中の機能障害を示さない人をショートスリーパー(短時間睡眠者)と定義しています。一つ前の睡眠障害国際分類第2版(ICSD-2)では、日常的な夜間の睡眠が5時間未満で、日中に眠気あるいは睡眠不足に起因する他の日中の機能的障害を示さず、他の睡眠障害、内科的あるいは神経学的疾患、精神疾患、投薬あるいは薬物使用による睡眠の妨害が存在しないこととされていました。
これまで言われてきたショートスリーパーは、習慣的な睡眠時間が大多数の同年齢層の人間より短く、かつ不眠愁訴があり睡眠に問題があるとされる群(短時間睡眠愁訴群)、勤務体系や社会生活上の規制で本来必要とする睡眠時間より短い時間の睡眠しか確保できないが、その状態が一般的と思っている群(外的強制による短時間睡眠群)、生活習慣の自己コントロールができず就寝時刻が常習的かつ不規則に遅くなり起床時刻が決められているため睡眠時間が短くなってしまっている群(内的調節不備による短時間睡眠群)、短時間の睡眠しか元来必要とせず短時間の睡眠で心身機能回復と身体修復が可能な群(生理的短時間睡眠群)に分類できるように思われます。さらに、短時間睡眠愁訴群には、うつ状態や躁状態の患者も含まれている可能性があり、外的強制や内的調節不備の短時間睡眠群は、ショートスリーパーではなく睡眠不足症候群に分類すべきでしょう。年齢に特異的な平均の睡眠時間よりも休日も含めて2時間以上睡眠時間が短く、かつ日中の機能的な障害がほとんどなく、長い目で見た身体的な障害もみられない人を、本来のショートスリーパーと考えた方がいいでしょう。

2.ショートスリーパーの割合は?

 ショートスリーパーの人の割合は、ICDS第2版で女性の4.3%、男性の3.6%と報告されていましたが、不眠障害やその他の睡眠障害ともみられる人が混在している可能性があり、本当の意味でのショートスリーパーの割合を示しているとは考えられません。
 筆者等は、2004年にインターネットを用いて全国の24,231名の16~75歳の男女の平日の睡眠時間と休日の睡眠時間の延長について調査したことがあります。図の左図は、平日の睡眠時間を5時間未満、5~6時間未満、6~7時間未満、7~9時間未満、9時間以上に分類し、全回答者のヒストグラムを示したものです。外的強制による短時間睡眠群、内的調節不備による短時間睡眠群、短時間睡眠愁訴群、生理的短時間睡眠群を含む5時間未満の短時間の睡眠しか取っていない人は10.6%もいました。しかし、休日と平日の睡眠時間に差がないか休日の睡眠時間が平日より短い人は1.5%しかいませんでした。このことは、5時間未満の睡眠しか平日に取っていない人の9.1%は、平日に睡眠が不足していて睡眠負債が蓄積し、休日にどうにか睡眠負債を返済している人です。本来のショートスリーパーではないことがわかります。1.5%のショートスリーパーのなかには、短時間睡眠愁訴群の人も含まれるでしょう。生理的ショートスリーパーは、さらに少ないのでしょう。筆者の個人的な感じですが、0.5%以下だと思われます。200人に一人以下ということですね。平日に9時間以上の睡眠を取っている回答者は3.8%でしたが、休日と平日の睡眠時間に差のない回答者は1.5%でした。回答者に803名の16~17歳のティーンエイジャーと278名の65歳以上の高齢者を含んでいます。運動量の多い若年者では、一般に長めの睡眠が必要で、高齢者では睡眠の質が悪化している人が増え、ベッドタイムが長くなる傾向があります。本来のロングスリーパーの人の比率はもっと低いと思われます。図1右図は、6時間未満と5時間未満の睡眠しか取っていない人の比率を年齢層別に示したものです。ほぼ半数以上が6時間未満の睡眠しか平日にとれていないことがわかります。また、極めて睡眠時間が短い5時間未満の人が、どの年齢層でも10%前後見られています。

図1 日本人の睡眠時間分布

図1 日本人の睡眠時間分布
 インターネット調査による日本全国の16~75歳の男女24,231名(男性13,000名、女性11,231名, 2004年1月~5月調査)の就寝・起床時刻から算出した平日の睡眠時間の比率分布と6時間未満睡眠者の年代層別比率分布。

 厚生労働省の平成29年の「国民健康・栄養調査」の報告でも、40歳代と50歳代の女性の50%以上が6時間未満の睡眠しかとれていません。5時間未満の人も10%以上います。
男性はどうかといえば、40歳代と50歳代の男性も45%程度が6時間未満の睡眠しかとれておらず、5時間未満の人も10%以上います。仮に生理的なショートスリーパーが0.5%未満とすれば、日本の社会の中心である40~59歳の男女のほぼ半数が、多大の睡眠負債を抱えながら生活していることになるのです。
 米国ではどうでしょうか。2003~2005年の生活時間調査のデータより、15歳以上の47,731名の男女の睡眠時間が報告されています。(Basner M, Fomberstein KM, Razavi FM, et al: American time use survey: sleep time and its relationship to waking activities. Sleep 30:1085-1095, 2007.)45~54歳の米国男女の平均睡眠時間は7.9時間でした。また、5.5時間未満の睡眠しか平日(月曜日~金曜日)に取っていない米国人は5.9%(男性7.0%、女性4.8%)で、9.5時間を超える睡眠を取っている人は、23.9%(男性22.9%、女性24.6%)もいました。日本とは大違いです。
 スタンダードスリーパーには、どのくらいの睡眠時間が必要なのでしょうか。2015年1月に米国NIHや米国睡眠医学会がサポートしている米国睡眠財団(National Sleep Foundation)が、脳の機能や健康に被害のない睡眠時間を、推奨時間(Recommended Range)と限界範囲(May be Appropriate)として公表しています。(Hirshkowitz M, et al.: National Sleep Foundation's sleep time duration recommendations: methodology and results summary. Sleep Health 1: 40-43, 2015.)数多くの国際医学論文を解析してまとめたものです。新生児(0~3ヶ月)は14~17時間(11時間未満と19時間超は限界範囲外、以下()内は同様)、乳児(4~11ヶ月)は12~15時間(10時間未満と18時間超)、幼児(1~2歳)は11~14時間(9時間未満と16時間超)、学童前期(3~5歳)は10~13時間(8時間未満と14時間超)、学童期6~13歳)は9~11時間(7時間未満と12時間超)、ティーンエイジャー(14~17歳)は8~10時間(7時間未満と11時間超)、成人(18~25歳)は7~9時間(6時間未満と11時間超)、成人(26~64歳)は7~9時間(6時間未満と10時間超)、高齢者(65歳以上)は7~8時間(5時間未満と9時間超)と報告しています。日本人の半数近くは、限界範囲以下の睡眠時間しか取れていないのです。
 次回は、ショートスリーパーの睡眠構造の特徴と、スタンダードスリーパーが睡眠時間を短縮すると脳の機能にどのような影響があるのかとについて説明し、ショートスリーパーには誰でもなれるものかどうかを考えてみます。

文章:睡眠評価研究機構代表 白川修一郎先生

日本睡眠学会 Japanise Society Of Sleep Research
JOBS 一般社団法人 日本睡眠改善協議会