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眠りについて知ろう

No.34 ストレスは眠りの大敵

強いストレスを感じると、脳の下垂体から副腎皮質刺激ホルモン(ストレスホルモン)が分泌され、交感神経を刺激します。その結果、意識水準が高まり、眠れなくなることがあります。このとき、睡眠不足などにより脳が疲れていると、ストレスをより感じやすくなるため、一層眠れなくなることがあります。また、たとえ眠りに就けてもノンレム睡眠(深い睡眠)が阻害されやすく、眠りの質が低下しやすいこともわかっています。
その逆に、「嫌なことがあっても一晩眠れば忘れる」といわれことがあるように、しっかりと睡眠がとれれば、ストレスを早く解消することができます。というのも、ノンレム睡眠時は、不必要な記憶を消去する働きがあるためです。
つまり、ストレスと睡眠は常に拮抗する関係にあり、ストレスが強いと眠れなくなり、脳の疲れもとれず、ストレスへの抵抗力も免疫機能も低下(ストレスは免疫機能を低下させる大きな要因)してしまう。逆に、ストレスがあっても深い睡眠がとれれば、ストレスは速やかに解消され、睡眠状態も免疫機能も良くなるといえます。その根拠として、睡眠中に分泌されるデルタ睡眠誘発ペプチドという物質にはストレスホルモンの分泌を抑制し、成長ホルモンの分泌を促す働きがあり、眠りによってストレスホルモンが分解されると、それ自身が睡眠物質へと変わり、より眠りが促進されます。

慢性ストレスにご用心

ストレスにもいろいろな種類がありますが、眠りは精神的ストレスに影響されやすく、一時的な急性ストレスより、慢性ストレスのほうが、不眠を長期化させたり、体調にも影響が出やすいといわれています。

ストレスを感じた直後は生体防御反応が起きて緊張が高まりますが、少し落ち着くと、安定した抵抗期となり、はじめのストレッサー(ストレス源)には抵抗で きるようになります。ただ、この時に、新たなストレスが加わると抵抗性は低下してしまう特徴があります。また、強い刺激をもつストレッサーに長く暴露され ると、生体の抵抗機能が疲労し、適応力がなくなってしまいます。つまり、一時的な急性ストレスより慢性ストレスのほうが心身の不健康を生じやすく、眠りへの影響も深刻になる(Lazarus, R.S)と考えられます。

重要な会議の前夜に眠れなくなる経験は誰にもあると思いますが、このようなストレスは、一時的に寝つきが悪くなっても体にはほとんどダメージは出ず、会議 さえ終われば、眠れるようになります。しかし、仕事や人間関係の悩みなど、なかなか解消できないストレスは慢性化しやすく、抵抗性が低下していき、ジワジ ワと生体にダメージが加わり、眠れているようで眠れない、いつまでも気分がすぐれないといった状態になりやすいといえます。

ただし、適度なストレスはやる気を引き出し、目覚めを促す原動力にもなるので、まったくストレスがない状態もよくありません。自分の心の中でマイナスでは なく、プラスに感じるようなほどよいストレス(目標など)は、生活にメリハリをつくり、睡眠覚醒リズムを整えるのにも役立つといえます。

ストレスに弱いタイプの人は特に注意

同じストレッサーを体験しても、その感じ方には個人差があります。まじめで責任感が強い、いつも時間に追われている、競争心が強く負けず嫌い、イライラしやすいといった、いわゆるタイプA行動特性の人や、いつまでもクヨクヨしやすい執着気質の人は、 ストレス耐性が弱い傾向があるので、日頃から注意が必要。ストレスは眠りにくくなるだけでなく、寝言や歯ぎしり、睡眠時遊行症(夢中遊行。覚醒していない のに歩き回る)などの原因になることもあるので、大人になってもこういった状態が起こりやすい人は、ストレスがないかをチェックしてみる必要があります。

主なストレッサーには、物理的(暑熱、寒冷、放射線、騒音など)、化学的(環境ホルモン、薬物、薬品、酸素欠乏など)、生物的(寄生虫、細菌感染など)、 心理的(事故、死、手術、受験、試合、人間関係など)などがありますが、下記の「社会的再適応評定尺度」*を参考に自分がどんなストレスに弱いのか、理解 しておくこと。そして、避けられる物は避け、自分なりのストレス解消法を準備しておくことが大切です。

社会的再適応評定尺度
ホームズ&レイ(1967年)氏が作成したもの。下記はその一部を抜粋したものです。ある事柄を経験し、その事柄に再適応する(元気な状態に戻る)のに必 要なエネルギーの大きさを示しています。値が大きい事柄ほどストレス度が大きく、眠りにも影響する可能性が高いと考えられます。
※ストレスの感じ方は個人によって異なります。

生活上の出来事 ストレス度
 配偶者と死別 100
 離婚 73
 結婚生活における別居 65
 刑務所への服役 63
 障害を抱えたり病気になる 53
 結婚 50
 仕事を首になる 47
 家族の病気 44
 妊娠 40
 性的な悩み 39
 子供の出産 39
 財政的問題 38
 親友との死別 37

文章:睡眠改善インストラクター 竹内由美
参考図書:「睡眠とメンタルヘルス」(監修:上里一郎、編集:白川修一郎)ゆまに書房

日本睡眠学会 Japanise Society Of Sleep Research
JOBS 一般社団法人 日本睡眠改善協議会