No.72 高齢者の眠りについて
年齢が高くなると、睡眠力も覚醒力も低下しやすい
中年以降、ノンレム睡眠が減少し始め(深い睡眠を示す段階3・4が減少する。女性も更年期以降、眠りが変化しますが、男性の方が顕著に深い眠りが減る傾向 がある)ますが、70歳を超える頃になると、レム睡眠(夢を見ることが多く、記憶の定着に不可欠な時間)も減り、浅い眠りが増えます。そのため、夢見が減 ると言われています。また、覚醒を維持する機能も低下してしまうため、夜、早い時間に眠くなり、その結果、早朝に目が覚めてしまう人も増加。眠りが浅くな るため、ちょっとした刺激で目が覚めやすく、トイレの回数も増える人が多いため、中途覚醒も増えます。
睡眠時間は若い人と同じ、7~9時間は必要だと考えられていますが、眠りが浅く、覚醒度も下がりやすい(つまり夜と昼のメリハリがなくなる)ため、布団に入って過ごす(だらだら横になって過ごす)時間が長くなる傾向があります。
年齢が高くなると長期的な不眠も増えると言われ、40歳台では全体の10%程度ですが、50歳以降は急激に増え、高齢者では15%に上ると言われていま す。不眠が続くと日中の生活の質が低下し、それがまた睡眠を悪化させるという悪循環となるので、眠りに問題がある方は、早めに専門医に相談を。
夜早く眠たくなってしまう人は…
夜、早い時間に眠くなってしまう人は、次のような生活を心がけてみてください。それでも改善がない場合は、やはり、専門医に相談を。
1.朝起きたらしっかり太陽の光を浴びる
2.午後0時~3時の間に30分程度の昼寝を習慣にする
3.夕方、適度な運動をする(ウォーキングや水泳など、少し息が上がるような有酸素運動。歩く場合はのんびり歩くのではなく、早歩きを)
4.日中は楽しみややるべきこと(主に人との接触)を作り、活動的に過ごす
5.日が落ちた後も照明を明るく保ち、楽しくゆっくりと食事や入浴をして、覚醒を維持する
夜8時に眠ると、3時か4時に目が覚めてしまうのは当然のことなので、あまり焦らず、就寝時刻を遅らせる工夫をしてみましょう!
夜間頻尿は夜間睡眠を妨げる大きな要因に
不眠や中途覚醒の原因はさまざまですが、それらの多くに夜間トイレによる覚醒が影響していると言われています。ある調査では、長期不眠を訴える高齢者の55%が、夜間に2回以上排尿に行くと伝えられています。
本来、睡眠中は抗利尿ホルモンが活発に分泌されるため、目覚めることはないのですが、1.前立腺肥大などの病気がある、2.就寝前にアルコールやカフェイ ン、ニコチンなどを摂取するなど、生活習慣に問題がある、3.睡眠・覚醒のメリハリがなくなることにより、抗利尿ホルモンの分泌が弱くなる(通常は夜間よ り日中の尿量のほうが圧倒的に多いのですが、生体リズムなどが乱れている人は、夜間の尿量の方が多い人が少なくありません)といった理由で、トイレの回数 が増えてしまうことがあります。夜間のトイレは転倒の危険があり、骨折事故などのリスクを高める要因(とくに冬は注意)にもなります。
また、トイレは睡眠を中断するため、脳や身体にさまざまな悪影響を与えます。ある研究調査では、夜間に3回以上トイレに行く人は、4年後の生存率が正常な人より30%も低いと伝えられているほどです。不眠の悪影響については「No1.睡眠を見直そう」をご覧下さい。
夜間頻尿を改善するために、前立腺肥大などの病気を治療する、頻尿を止める薬を服用するといった方が多いと思いますが、朝、太陽の光を浴びる、就寝前にア ルコールやカフェイン、ニコチンなどは避けるなど、生活習慣を見直して睡眠・覚醒リズム(日中と夜のメリハリ)を整えることも有効です。とくに、夕方の適 度な運動は効果大。運動習慣がある人は習慣がない人に比べ、夜間排尿の回数が少ないと言われており、眠りの質もよくなることがわかっているので、ぜひ、ま めに身体を動かすようにしましょう。
*トイレの回数を減らしたいからと、水を飲まない人がいますが、それは健康によくないので絶対にしないこと。
文章:睡眠改善インストラクター 竹内由美
資料提供/白川修一郎