No.15 何時間眠るのが良い?
8時間睡眠がいいというのは思い込み
昔から「人生の3分の1は睡眠」といわれるためか、8時間眠るのが理想的だといわれてきました。しかし、最近の大規模調査では、それよりもやや短い、約7 時間の睡眠が指針として出てきました。2002年米国カリフォルニアのクリプケ氏らが「睡眠時間と健康リスク」と題して、何時間眠っている人がもっとも病 気になりにくいかという長期的な大規模な調査を行ないました。その結果、6時間30分から7時間30分眠っているグループがもっとも病気になりにくいとい うことがわかりました。また、同様の調査は名古屋大学予防医学の玉腰暁子先生のグループも行なっていますが、その結果もほぼ同じ7時間程度の睡眠時間のグ ループがいちばん病気のリスクが低いという結果が出ました。
睡眠時間は長くても短くてもダメ
これらの調査で興味深いのは、6時間より睡眠時間が短くなればなるほど、また、逆に8時間より睡眠時間が長くなればなるほど、病気になるリスクが上がるということです。
短いのは何となく理解できるものの、長くても病気になりやすいというのは不思議。長く眠れば身体の疲れが取れて健康に過ごせそうなのに…と思われる方も いらっしゃるでしょう。この結果を分析すると、睡眠時間が短い場合はやはり、脳と身体の疲れが解消されず、そのため、体調を崩しやすいと考えられます。ま た、睡眠時間が長すぎると病気になりやすい訳は、おそらく、生体リズムが崩れてしまうからでしょう。私たちの身体は適度に眠り、適度に活動してはじめて、 バランスよく動くようにできているということです。起きている時間が長すぎる、または逆に短すぎると、生体リズムが乱れ、身体の機能も乱れてしまうと考え られます。
大切なのは十分に眠ったという実感とリズム
ここまで読まれた方の中には、「自分の平均睡眠時間は6時間30分から7時間30分ではないから、病気になってしまうかも…」と心配になった方もい らっしゃるでしょう。でも、実は睡眠時間には個人差があり、人口の数パーセントは6時間未満の睡眠でも平気なショートスリーパーと、9時間以上の睡眠が必 要なロングスリーパーがいるといわれます。つまり、4時間でもスッキリ目覚めることができ、疲れを感じずバリバリ仕事ができる人もいるのです。また、遺伝 的なものや食事などの生活習慣も健康に影響するので、6時間未満または9時間以上の睡眠だからといって、必ずしも病気になるということではありません。
しかし、8~9割の人は、7時間程度の睡眠が必要なバリュアブルスリーパーといわれているので、今の睡眠時間が 6時間30分から7時間30分にあてはまらない人は、やはり見直したほうが良いでしょう。とくに、今の睡眠では足りない気がする。ぐっすり眠れた気がしな い。疲れが取れにくい。目覚めが悪いという人は、今すぐ睡眠時間を見直して。また、平日はすぐ目が覚めるという人でも、「No.12 週末の過ごし方に要注意!」で述べたように、週末はなかなか起きれず、平日より何時間も多く寝てしまうという人も、やはり睡眠が足りないといえるので、気をつけて。
ただし、いくら7時間睡眠を保っていても、前々日は11時に寝て6時に起床、昨夜は午前3時に寝て午前10時に起床というように、生活が不規則なのは決 して健康的な睡眠ではありません。病気の場合やストレスが強いときなどは、睡眠時間が変化してしまうことがありますが、規則正しい生活を心がけ、6時間 30分から7時間30分の睡眠時間を確保することが好ましいといえるでしょう。*これは成人の場合で、子どもの場合(中学生になるくらいまで)は9時間以 上の睡眠が必要だといわれています。
文章:睡眠改善インストラクター 竹内由美